先日国内線で、チーフパーサーをしていた時のことです。
CAが飛行機に乗り込むと既にキャプテンがコックピットにおり、何やら掃除機で丹念にコックピット内を掃除しています。
(通常、便と便の間に清掃さんが掃除をするのは客室だけです。時々整備さんがコックピットの窓を開けて窓拭きをしますが、それもまれに見られる光景です。
コックピット内の掃除は定期で行われる整備の時にされる程度と耳にしたことがあります。)
『随分綺麗好きか、風変わりなキャプテンなのかなぁ…。コミュニケーションの取りやすい人だと良いのだけど…。変人でありませんように…。』などと、心の中で祈っていると、整備さんが一言、「いやぁ、変わりもんですねぇ。頑張って。」笑。
と言って来ました。『あーあ。やっぱり。変人かぁ…。だよね。便間で、ご案内時刻まで時間ないのに掃除しちゃうんだもん。』なんてブーブー心の声で叫びつつも、クルーブリーフィングではしっかり笑顔で応対。笑。 しかし、思っていた様な話しにくい感じはなく、真面目に仕事をするタイプの様子で、一安心。笑
(機長とのコミュニケーションが上手く取れないとチーフパーサーとしては非常にフライトにおいて、情報の共有などに苦労するのです。涙。)
何とか無事に、良い雰囲気で3便ものフライトを終えました。
その日は地方でスティだった為、クルー皆で一杯飲みに行くことになりました。(変人なんて思っていた為、飲みに行かないかと誘われた時はかなりビックリしました。笑。)
美味しいご飯に、美味しいお酒でお腹も心も大満足になった頃、ほろ酔い気分のキャプテンがふと私にこんな話を始めました。
「俺がコックピットを掃除しているのを見て、変な奴と思っただろう?でも、掃除するのには訳があるんだよ。俺は機長だが、機長とは名ばかりで結局の所、飛行機を動かす“職人”なんだよ。だから、職人は仕事道具を常に綺麗にする。だから俺は自分の仕事道具であるコックピットを必ず掃除して綺麗にしてから操縦させてもらうんだよ。俺はお客さんを乗せて飛ぶようになってから40年近く経つけど、必ず欠かさず掃除してるんだよ。この考え、想い、分かるかなぁ…。」笑
私はこの話しを聞いて、プロフェッショナルであるということへの意識の高さに深く感動しました。そして、『変人』なんて思ってしまった自分の未熟さと浅はかさに恥ずかしさを感じずにはいられませんでした。
入社した頃、厳しいのでめちゃくちゃ有名な先輩(笑)に「何でも良いから、自分なりの“こだわり”をもって仕事をすると、色々な点で見えるものが変わってくるわよ。」と言われたことがありました。その頃から私は、サービスカートの中を綺麗に使うこと。(ドリンクなど整理整頓して取り出し易くするなど。)新聞ラックは常に綺麗にすること。ビジネスクラスのお客様の座席前ポケットに入っているゴミはすぐに捨てて、常に綺麗にしておくこと。などのこだわりを持って乗務してきました。
ふとそんなことを思い出し、キャプテンに話したら、「君も職人だな。」と、言って笑っていました。
私はプロフェッショナルには程遠い人間ですが、自分の中にこだわりをもって仕事をすることで、仕事への姿勢や考え方、想いも変わるのかもしれない。と改めて思いました。
翌日、やはりキャプテンはコックピットに掃除機をかけていました。そこへ整備さんと地上係員がやって来て、予想通りの表情を浮かべたので、昨日の話しをしたら2人とも驚きの表情に変わりました。
“こだわり”は時に他人に理解されず、変な目で見られることもあります。しかし、こだわりをもっている人こそ仕事への熱い想いや愛情がある人であり、また、こだわりを欠かさずに続けられる人こそがプロフェッショナルへの切符を貰える人なのではないかと思いました。
皆さんは今、毎日の生活の中に“こだわり”を持って生きていますか?

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